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事業再生の現場から

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(117)コストカットに「情けは仇」!〜経営者の執着が黒字を食い潰した失敗例

不動産 前回は「コストカット」の極意として「情を挟んではいけない」とお伝えしました。
これは、人件費だけでなく、設備を減らすことにも当てはまります。

設備投資,償却後には型遅れ製品に
関西の精密部品メーカー、U社(仮称)の例を見てみましょう。
U社には、当時では「世界初」という船舶用部品製造のために購入した金属プレス用の機械がありました。
昭和40年代に約2千万円もしたというので、かなりの設備投資です。

ところが、その機械を導入した創業社長はすでに引退。
息子さんがその跡を継いだ頃には、既にその機械の償却は終わっていた上に、型遅れで部品もなくなり、機械を扱える職人も歳を取ってしまっていました。
業界全体の技術革新が進むなかで、やがてその事業が大きな赤字となるのもあっという間でした。

工場を縮小していれば
実はU社には他にも、小さな部品を削り出す仕事もあり、そちらはわずかながら黒字になっていました。
本来であれば、古いプレス機を使った時代遅れの仕事をやめて、部品の削り出し一本に絞って工場を縮小すれば、苦しい経営を立て直すことは十分に可能な状態でした。

けれど2代目社長は、会社の礎を築いた先代社長の思い入れが詰まったプレス機を、どうしても手放せなかったのです。

某大手家具販売会社のお家騒動に比べれば心温まる話
最近、某大手家具販売会社のお家騒動が問題になっています。
それと比べればなんと心の温まる話か…と言いたいところですが、遂に決断を下すことのできなかった経営者とU社が、その後どんな道を辿ったかは、想像がつくでしょう。

確かに、それまで多額の投資をした、手塩にかけたというものであればなおさら、捨てたり、売却したりするのは心が痛むに違いありません。 けれど、そういう場合にこそ、思い入れを断ち切って、セオリー通りにやり抜くことが重要になるのです。

「情けは人の為ならず」
日本の有名なことわざの一つに「情けは人の為ならず」という文句があります。
「情けをかけることは、結局はその人のためにならない(のですべきではない)」と誤解する人が増えているとも報じられていますが、本来は「情けは人のためではなく、いずれは巡って自分に返ってくるのであるから、誰にでも親切にしておいた方が良い」というのが原義。
 この先も伝え続けたい、助け合いの精神を端的に表す素晴らしい言葉です。

もちろん、どんな産業であっても「人の為」の事業でなければ意味がありません。
しかし、企業や従業員を守る使命を負った経営者は、同じことわざでも
「情けは質に置かれず(経済的な意味のない情けは役に立たない)」や、「情けが仇」という言葉があることも知っておいていただきたいと思います。

[2015.3.24配信]

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