初めての方へ資金調達債務返済、債務超過不動産リースバック

TOP > メールマガジン > 事業再生の現場から > 「売れる」ビジネスモデルはどこに?〜書店再生3

事業再生の現場から

メールマガジンで紹介しております「事業再生の現場から」を紹介しています。


(16)「売れる」ビジネスモデルはどこに?〜書店再生3

大型化も収益増ならず
時代の変化に押されて、「町の本屋さん」の経営が困難を極めていることはこれまでにお伝えしたとおりです。書店店舗数の推移を調べてみるとここ10年で急激に減少し続けています。平成13年には日本国内の書店の店舗数は、20,000店を超えていたのですが、現在はその3/4程度にまで落ち込んでいます。ところが、国内の書店の総売場面積は店舗数の減少に反して大幅な増加傾向にあります。書店はどんどん集約され、大型化しているということがわかります。新規開店の店舗数はほぼ一定で推移しているものの、その何倍もの数の書店が閉店に追い込まれているのです。
ただし、一店舗あたりの売場面積は増えているにもかかわらず、書籍販売の売上げは減少しているということは、店舗拡大による儲けが出ていないということにほかなりません。店舗が大型化することで店頭の書籍ラインナップを充実させることができ、店舗に訪れる人々の満足度は向上します。とはいえ、それが必ず利益につながるかといえば、疑問です。書店を「ただで暇がつぶせる場所」として利用する人は少なくありません。
また、最近騒がれている「万引き倒産」も店売依存の弊害と言えるでしょう。書籍の売上げが伸び悩むなかで、収益の悪化に拍車をかけている万引きの被害額は年間で数十億にも上るのです。予算的に充分な防犯対策を取ることができない中小書店にとっては、死活問題です。さらに、拡大した店舗に人員を投入することにより外商が疎かになっていることも無視できません。小さな規模で商売をしていれば得られるはずの売上げを逃しているとも考えられます。

「御用聞き」営業で収益確保
4年前、倒産の危機に見舞われながらも、M&Aによって再生を果たした東北地方の斉藤書房(仮称)は、店長自ら毎日配達に駆け回っています。「今年も別の店舗の赤字を埋めてやったぞ」と得意げに語る斉藤店長。今年の8月も黒字で決算を終えた様子です。
元来、地域の老舗書店といえば、店舗は小さくとも外商で確実に利益を出していたのです。書店の外商担当者は、出版社や取次からの新刊情報を見て「これはあのお客さんが好むだろう」と目をつけておき、配達をしながら挨拶のついでに紹介し注文も取る、といった「御用聞き」のような営業スタイルが主流でした。顧客との密着したコミュニケーションで地道に売上げを伸ばしていました。
発注の前に予め注文が取れれば、店頭でどれくらい売れるか、という予測もつくものです。そしてその店舗にとっての適正部数を仕入れ、責任を持って販売する実質的な「責任販売」が、以前は広く行われていたはずなのです。
業界特有の「再販制度」の弊害が表面化するにしたがって、責任販売の重要性が大きく語られるようになりましたが、未だ浸透には至っていないようです。それはなぜなのでしょうか。次号、お伝えしたいと思います。

[2010.12.21配信]

ページトップへ