初めての方へ資金調達債務返済、債務超過不動産リースバック

TOP > メールマガジン > 事業再生の現場から > 倒壊免れた蔵元「今できることをやっていくだけ」

事業再生の現場から

メールマガジンで紹介しております「事業再生の現場から」を紹介しています。


(24)倒壊免れた蔵元「今できることをやっていくだけ」

先日、YouTubeなどの動画投稿サイトで、岩手県の酒造会社が「被災地から『花見』のお願い」を発信しているという報道がありました。「東北地方の酒や食材を積極的に購入・消費することで東北地方の復興を応援してほしい」と訴えたものです。

※詳細はブログでご紹介しています ⇒ http://www.h-yagi.jp/07/post_230352.html

「若者の日本酒離れ」が叫ばれて久しいものですが、それに伴って、セントラル総合研究所には地方の蔵元(主に日本酒)からの相談も寄せられています。その中には、その時々のブームに合わせて「地ビール」や「梅酒」などの新しい商品を開発して成功している企業もあります。しかし、そのための投資もままならず、厳しい戦いを強いられている企業のほうが圧倒的に多いのが実情です。

利益が出ても蔵の修理に
東北地方の内陸部にある小倉酒造(仮称)は、大正創業の歴史のある蔵元で、県内外の鑑評会でさまざまな賞を受賞しているという実績もあります。また、地ビールの醸造にも早くから力を入れており、細やかな営業の成果もあって、首都圏や西日本にも多くのファンがいます。ところが、社長の佐藤氏(仮名)曰く「薄利多売。少し利益が出たと思っても、蔵の補修なんかですぐ無くなってしまう。従業員の給料も、少しは上げてやりたいのだけど」。
決算書を拝見すると、確かに地ビールの出荷量が年々増えてはいるものの、「増益」とは言えない低空飛行の状態。30名ほどいる従業員のほとんどはパート契約で、時給は県の最低賃金額と同額です。それでも「最低賃金改正によって人件費が上がって、赤字になる月もあるんです」と、途方に暮れていました。

利益より、できることをやっていくだけ
東日本大震災の発生後、小倉酒造の様子が気になって連絡を取ってみると、スタッフは遠方に出張していた営業マンも含め全員無事。商品や建物に多少の被害はあるけれども、倒壊は免れたとのこと。
それを聞いて幾分安心しつつ、復旧までは時間がかかるだろうと心配していると、佐藤社長は思いがけないことを仰いました。「地震の後片付けもまだなのに配達の注文が多くて、参りました。」東北地方では、香典返しなどにお酒をお渡しする習慣があるそうで、震災後に葬儀屋さんからの注文が増加しているそうなのです。
「会社も人も無事で、仕事もあって、愚痴を言っては罰が当たると思うけど、相手のことを考えると気が滅入って──」心労を隠せない佐藤社長。「海の方では津波でまるごと流された蔵もある。そこをカバーするためにも、今は利益とかではなく、できることをやっていくだけ」

震災発生から1ケ月経過しても、次から次へと辛いニュースが流れています。そのような状況の中でもセントラル総合研究所では、中小企業を力づけられるような情報を発信していきたいと考えています。 ずいぶん気落ちした様子の佐藤社長ですが、「辛いことがあっても、いいこともあった」と教えてくれました。次回はその「いいこと」の方をお伝えしたいと思います。

[2011.4.19配信]

ページトップへ