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事業再生の現場から

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(27)未曾有の危機に中小企業を救った「生きた BCP」とは

東日本大震災が発生する4ヶ月前に非常事態を想定したBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定していた(株)OPN(仮称)。地震や津波で甚大な被害を受け、さらにその後も停電や燃料不足で混乱するなかでも、早期の操業再開に漕ぎ着けることができました。社長の越谷工吉氏(仮名)は「まさかあれほど大きな被害を受けるとは考えたくなかったけど、『転ばぬ先の杖』があって本当によかった」と語ります。誰も予想できなかった未曾有の危機に、実際に活用されたのはどのような対策だったのでしょうか。

売上高を5割減も想定済み
最初の地震発生直後、OPNでは地域一帯の停電により設備の稼動が停止。立っていられないほどの大きな揺れに襲われながら、越谷社長は素早い判断を行いました。
OPNが位置するのは関東の海岸側でした。大きな地震に続いて予想されるのは津波です。当時、OPNの社内には約40名の従業員がいましたが、全員を避難させました。本社機能は内陸部にある社長の自宅に移し、度重なる余震に襲われながらも、操業再開へ向けてすぐさま動き出したのです。廃油回収の再開に当たっては、近隣の市町村の同業者と連携することを取り決めていました。BCPには同業者だけでなく運送業者など、支援を頼める協力会社を盛り込んでいたため、震災発生の数日後から深刻化することになる燃料不足にも対応できたことも、大きなポイントとなりました。
海岸近くにあった廃油や廃プラスチックの再処理工場は津波によって冠水し、タンクの半分以上が流失、プラント建屋も破壊されました。しかし、残った設備をどの順番で復旧させるかなど、手順を予め決めていたため、停電が解消してからは、すぐに24時間フル稼働の体制をとることができました。さらに、OPNのBCPでは廃水処理などを柱に、売上高を5割減にとどめる想定もしていたといいます。「売上減は5割では効かないと思う。設備の改修必要だしこれからが大変だけど、BCP策定を決めた時から心構えはできています」と語る越谷社長の姿は非常に頼もしくあります。

策定の過程で自社のリスクを把握
東日本大震災発生前の中小企業のBCP普及率は全体の2割程度に止まっていましたが、BCP策定といった緊急時対策を経営の「最重要課題」とする企業は急速に増加しています。特に被災現場はまだその段階にないかも知れませんが、各自治体においても今後の復興に合わせ、BCP策定支援が強化される見通しです。
中小・零細企業においては、日々の運転資金にも苦しむ状況下、あるとは限らない非常事態を想定した資産の確保、運用が困難なことは想像に難くありません。ただし、金融機関の意見としては、「BCPは、策定の過程で自社のリスクを把握できる」として、取引先の企業に策定を働きかける動きも出ています。
過去に危機対応マニュアルを作成したものの、実用されないままお蔵入りになっている企業も少なくないかと思います。強烈な大震災を体験し、記憶に刻みつつある今こそ、生きたBCPを再構築する好機です。

[2011.6.1配信]

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