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デフレを自覚させないスクリューフレーションの脅威
金融政策:舵取り誤ればデフレ、バブル発生
日本経済が抱える問題に長引くデフレがあり、この状態は10年以上続いています。デフレはデフレーション(Deflation)の略語で継続的に物価が下がり続けます。反対に、インフレーション(Inflation)の略語のインフレは、物価が上昇することを示します。極端なインフレやデフレは、経済に悪影響をもたらす恐れがあるため、日本の中央銀行・日本銀行が金利の引上げや引下げでコントロールしています。各国の中央銀行では金利の調整など金融政策が行われていますが、舵取りを誤ればデフレやバブル発生などを引き起こす要因ともなります。
デフレは、円高や株安、国内産業の空洞化、少子高齢化など景気後退でモノやサービスが売れなくなり、価格が下がり企業の収益も悪化します。企業はコスト削減に消費を抑え、従業員の賃金削減などで家計のの消費も抑制されます。この状態が繰り返され、さらに物価が下落すればデフレスパイラル状態です。
消費者物価指数:「コアCPI」「コアコアCPI」とは
消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)は、全国の消費者世帯(農林水産業、単身者世帯は除く)が消費するモノやサービスの価格変動を総合的に測定した物価を示す代表的な指数です。総務省統計局では毎月、消費者物価指数を公表していますが、物価動向の要因を見るために「コアCPI」や「コアコアCPI」が注目されることがあります。
「コアCPI」は、「総合指数」から天候などに左右され価格幅が大きくなる「生鮮食品」を除いた総合指数。一方、「コアコアCPI」や「米国型コアCPI」とも呼ばれる指数は、米国など諸外国で重視される指数と同様のもので「総合指数」から「食料(酒類は除く)及びエネルギー」を除いた総合指数があります。総務省では、いづれも正式名称ではないとしています。
低中間所得層の貧困化とインフレが同時に起きるスクリューフレーション
総務省が公表した平成24年3月のコアCPIは、前年同月比0.2%増の100.00で2ケ月連続で上昇しました。価格が上昇した品目は、ガソリンが4.9%、生鮮野菜は10.0%、特にトマトは37.4%上昇。一方、下落した品目では、冷蔵庫が31.2%、ノートパソコンは18.7%下落と性能は向上しているはずが価格は下がる現象となっています。全体的に見ると生活必需品が上昇する一方、家電製品など贅沢品が下落する現象が起きています。
生活必需品が上昇、贅沢品が下落する状態は、生活に密接したモノ、サービスの価格上昇の認識が強く、デフレを感じさせない事が多く見受けられます。このような状態を最近は、スクリューフレーションと呼ばれ、生活必需品への消費が所得比率の中で高い、低中間所得層の貧困化(Screwing)と生活必需品が上昇するインフレーション(Inflation)を組み合わせた造語が使われます。贅沢品は下落しても、所得も減少すれば生活必需品が上昇で家計にも大きな影響を及ぼします。
スタグフレーションに類似でも解決策なし
スクリューフレーションに近い概念を持つスタグフレーション(Stagflation)は、沈滞(Stagnation)とインフレーション(Inflation)の造語で、景気後退と物価上昇が同時に発生する状態です。代表的な例として40年以上前のオイルショック時に確認されています。日本でのスタグフレーションは物価上昇により、企業の効率化や生産性の向上を促し、産業や企業、労働力の再編により成長を遂げ、長期的に是正されましたが、スクリューフレーションには明確な解消策はありません。
日銀小出しの金融緩和:効果続かず
日銀は、平成24年2月14日に消費者物価についてプラス1%上昇の目標を掲げ、デフレ脱却へ向けた意志を示しました。平均株価は一時1万円台を回復し、円高も歯止めはかかりましたが効果は薄れています。日銀が小出しに金融緩和を繰り返しても効果は期待できずデフレ脱却は望めませんでした。
日銀は、4月には国債などの買入れ基金を5兆円増やし70兆円とする追加の金融緩和策を決め、市場へ資金を供給し景気回復、デフレ脱却を後押しします。より一層日銀と政府は連携を強化し金融政策、経済政策、規制緩和などで日本経済の成長回復が望まれます。
[2012.5.11更新]