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事業再生の現場から

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(55)最低賃金改正!生活保護の「モラル・ハザード」是正が急務/高まる中小企業の雇用悪化懸念

厚労省:地域別最低賃金、1時間7円に決定

成果厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は7月、今年度の地域別最低賃金引き上げ幅の目安として「全国平均で1時間当たり7円」と定めました。これを踏まえて、各地方の審議会においてそれぞれの自治体の答申が進められています。
最低賃金は、労働者が低賃金で不当に働かされないように定める最低ラインです。現在の最高額は東京の837円、最低は沖縄、岩手などの645円と、その差は200円近く開いている状態。
目安通りの水準に引き上げられたとすれば、時給は全国平均で744円となる予定ですが、最低賃金の影響が特に大きい非正規労働者が増え続けるなか、この金額が全ての労働者の生活を支えるものとなり得るか、疑問視する声が大きいのは事実です。

生活保護費の需給:アルバイトするより得
ここしばらく取沙汰されている「生活保護との逆転現象」の是正も急がれるところ。最低賃金で働く人の収入が生活保護給付費を下回る逆転現象は11都道府県に拡大しており、逆転状態の都道府県には高い引き上げの目安が示されていますが、それでも一部では解消に至らない見通しです。
現金の支給に加え、納税や医療費が免除されるなどの理由から、「アルバイトなどで働くより生活保護を受けたほうが得」といったモラル・ハザードが生じているという実態も。人々の働く意欲を低下させないためにも、さらなる引き上げの検討が求められています。

法改正で人件費アップ、中小の経営圧迫にも
しかし、デフレが続く現在の日本の経済状況を鑑みると、「賃上げ7円」が少なすぎるとはいいにくいもの。無理な最低賃金引き上げは、ただでさえギリギリでやりくりをしている中小・零細企業にとって深刻な問題です。
地方では「最低賃金改正によって人件費が上がり、赤字になる月がある」と途方に暮れる企業も少なくはありません。企業経営を圧迫するほどの極端な最低賃金の引き上げは、逆に雇用縮小につながる危険性も孕んでいます。加えて、賃上げによるコスト増が、輸出産業にとっては国際競争力低下にもつながることも危惧されているのです。

民主党:平成32年までに平均時給1,000円に?
2年前、民主党政権誕生時に「平成32年までに全国平均時給1,000円、最低800円」との目標が掲げられました。この金額を達成するには、今後毎年30円ずつ引き上げる必要がありますが、現状のままでは不可能なのは火を見るより明らか。
生活保護支給額との逆転を最低賃金引き上げだけで解消するのは、もはや現実的でないことを認識し、制度全体の改革がなされなければ、経済衰退に拍車がかかることでしょう。
「最低賃金引き上げは個人消費を刺激し、企業収益増加の契機となり得る」「賃金アップで労働意欲が高まれば、生産性の向上にもつながる」という観点で賃上げが推し進められていますが、消費税増税、光熱費上昇など、生活に密着した問題が膨らみ続けるなかで全ての国民が安心して働き、暮らすためには、確実な雇用拡大のほうが先決であるはずです。

[2012.8.23配信]

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